今月のおすすめ ギリシア人の物語 |
私の趣味は読書。常時3冊並行して読んでいます。バッグに入れて電車やバスの中や駅で読む文庫本。(時々信号待ちなどで)もう一つの趣味のゆったりと入るお風呂で読むハードカバー本。そして、トイレに置く気軽な本。
これで月10から15冊くらい読みます。このページで本の紹介をしたいと思います。
第1回で紹介するのは、待ちわびた塩野七生さんの「ギリシア人の物語」。
「ローマ人の物語」を代表作とする塩野七生さんの本はすべて読んでいます。ファンです。
今回の「ギリシア人の物語」は古代ローマ以前のギリシアを描いています。
解説書によると、「古代ギリシアの民主政はいかにして生まれ、いかに有効活用され、機能したのか。
その背後には兵力で強大なペルシア帝国と戦わねばならない、過酷きわまる戦争があった。
不朽の名作『ローマ人の物語』の作者が、それ以前の世界を描く驚異の新三部作第1弾!」
これ以上の感想は書けないので、紹介はこの解説文に任せます。
私は、この本で「あっそうか!と思ったことを一つだけ書きます。
本を書くことは、読む人がいるということ。私はありがたくも字が読めます。
マッカーサーが戦後日本に来たときに、浮浪児もホームレスも新聞を読んでいたことに驚いた
という逸話があるとかないとか。でも識字率の高さに驚いたことは確かです。
日本で「私は字が読めます。」なんて言っても、「何言っているの?」になる。
でもこの本を読んで、字を読み書きできることが「民主政」につながるということにいまさらながら感動しました。
「民主政」とは一言で言えばリーダーや政策決定を市民が選ぶことができること。
古代ギリシアも古代ローマも、日本の縄文時代に、日本が戦後1945年になってやっと実現した普通選挙を、
紀元前8世紀ごろにはおこなっていました。すべての市民に選挙権がありました。(ただし、女性と奴隷には選挙権がありませんでした。女性のところには目をつむり、話を続けます。おそらく女性の識字率は低かったのだろうと想像します。)
選挙するということは、人の名前や政策を書いて投票すること。読み書きができなければほとんどなりたちません。
紀元前8世紀から紀元前3世紀くらいまでを古代ギリシア時代といいます。紙は貴重だったので、陶器の破片などを
引っ掻いて名前を書いて投票していたそうです。だから今でもこの投票用紙ならぬ投票陶器破片が残っています。
そうか~、民主政治には、識字率が重要なのですね。
識字率について脱線の話をします。
古代ローマやギリシア時代にも選挙権のなかった女性の識字率の話。
ギリシアやローマにははるかに遅れていたけど日本もアジアの中では群を抜いて高かった。
平安時代に紫式部が書いた源氏物語。貴族の中だけだと思うけど、平安時代に女性が大衆小説を書き、
女性たちが読んでいたのです。世界最古の小説ということですが、読む人がいて小説は成り立ちますから、
宮中に字が読める人が大勢いたのですね。女性の識字率は、日本が世界で一番かもしれないと思います。
鎖国を続けていた江戸時代に町や農村にも寺子屋があり、女性の寺子屋もありました。
そういえば、江戸時代には奉行所や幕府・藩から高札を立てていろいろなお知らせをしていた、
ということは庶民の識字率がたかかったことになります。
江戸時代末期、アジアは軒並み欧米の植民地化したけど日本は明治維新を経て植民地化を防ぐことができました。
これも急速に欧米の知識を取り入れたことに発して、やはり庶民の識字率が高かったことが
大きく影響しているのでしょう。
さて、民主政と識字率のつながりを捕らえてきましたが・・・・ん?
歴史上女性の識字率が高かった日本。でも現代、女性の政治家の率はかなり低い。
国会議員の数は世界で186か国中147位。何これ?
識字率と民主政のつながりをとらえてきたけど、日本の政治の実態は識字率と合わない。
何なのでしょう。
小説を読むだけでは解決できませんでした。
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